実はこのころ、私が部長に電話で伝えようとした内容のメモが残っています。「私と息子とでは、家に対して望むものが違うようなので、1階と2階とは分けて考えていただいたほうがよろしいかと思うのですが……」このとき、家のない息子たちのため、土地を買わなくてすむからと、二世帯住宅にしたらなどと声をかけなければよかったと、正直のところ後悔していました。夫と2人だけの家だったら、家に対する考え方や好みも一致していて、話し合いは順調に進んでいったでしょう。しかし、息子は家そのものに対するこだわりというよりも、価格が低いことが第1条件で、建売住宅でもマンションでもかまわないと言っているほどでした。この不透明な社会情勢や息子の慎重な性格からすると、借入金の負担を避けて賃貸住宅に暮らす方法を選ぶかもしれません。しかし、将来、返済が終われば家は自分たちのものになるのです。そして、何よりも息子たち家族が自立できるように、早く落ちつかせてあげたいのです。こんな夫と私の気持ちを、息子たちはどれほどわかってくれているのか不安でした。老後のことを考えると、私たちは自分たちの身のまわりの始末は、這ってでも自分たちだけでしたいと考えています。ただ、いずれ一人になったとき、あるいは入院したり、他人の手助けを受けなければならなくなったときに、若い身内がそばにいてくれて、声をかけてくれたり顔を見せてくれたら、どんなに心強いことだろう。でも、べったりとおんぶさせてもらおうなどとは少しも思っていません。そのためにも、自立して生活していける快適な住まいを建てようとしているのです。それなのにここにきて、息子と意見が食い違うたびに、私はわずらわしさの重荷を背負うようで気が晴れませんでした。夫と2人だけの暮らしのほうがすっきりはかどり、どんなによかったことか……。こんな考えが浮かぶほど、私は精神的に疲れ果てていました。