重要性が強調

2011.03.31

患者が過剰に心配する傾向、同病の患者が集中する専門医が対照と比較することなく自らの臨床観察に依存する傾向から、全体か偏向することもある。それゆえ疫学的研究が重要なのだ。原告側コンサルタント、臨床医ベイジーの場合、豊胸材が結合組織病の原因であるという考えは、一見もっともらしかった。豊胸材を入れた女性、特に直接注入を受けた女性の場合は局部的癩痕は避けられず、また、癩痕はある種の結合組織病、特に強皮症の特徴でもあるので、豊胸材と関係あり、とする学説に大勢の人が引き付けられた。しかし、それぞればらばらに報告されたそれらの研究報告が訴訟の基礎となり、評判が大きくなるにつれて、同じような症状を訴えて多くの女性が名乗り出た。豊胸材を入れた後の結合組織病様の病気の報告は(たいていは明確な診断もなく)、今や全部で、最初の日本の症例を含めて2、3百件発表されている。しかし、そういう症例がこれ以外にさらにどれ位あるのかについても、これらの女性達が同時期に発病したのは単に偶然によるものかも判断できない。その理由を考えてみよう。豊胸材を入れていて現在病気の女性は、禁止令以来、その問題に対する関心が高いので気にかけるようになりがちだ。過剰に気にするために、たとえ関連がなくても、あるという印象を強めるかもしれない。さらに一部の医者は関連があると自ら信じることで評判を上げる。そうなると、豊胸材を入れていて結合組織病やさまざまな愁訴をもつ患者を彼らは磁石のように引き付けるかもしれない。しかし、そういう女性達を臨床的に研究してみても、豊胸材が病気になる危険を増すかどうかの疑問が解けるわけではない。豊胸材と病気の両方をもっ女性が先へ先へと進む傾向と、医者がそういう女性達を他の女性達と比較せずに研究する傾向によって、全体像が大いに偏向したものになり得る。偏向の可能性があるからこそ〈コホート研究〉または〈症例一対照研究〉の重要性が強調されるのだ。豊胸材と病気に関連について事例と臨床経験からそれほど多くのことが分かるわけではない。しかし、分かると信じるのは実にたやすい。これを説明するのに例を挙げよう。原告側の常連コンサルタント、フランク・ベイジー(FrankVasey.M.D.)は、対照と比較しない観察に依存した人物だ。サウスフロリダ大学医学部リウマチ病学主任のベイジーが豊胸材が病気の原因だと確信するようになったのは、明らかに、主に自分や他の医者の臨床経験からと思われる。1993年に出版された著書の中で体内へのシリコーン拡散の結果として起こる最も深刻な状態は自己免疫不調であり、それにより体の免疫系は誤って健康な細胞組織、筋骨格構造を絶えず攻撃すると彼は主張した。彼の見解では、豊胸材を除去した患者33人のうち23人はよくなったことが彼の確信を確証するものだった。しかし、これはまさに、強力なプラシーボ効果(偽薬効果)が医者と患者の双方に作用した状況である。
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